無視できない点もあるが個人的には傑作だと思う
ととねこのゲーム紹介所・第24回 Switch/PS4/PC『フェノトピア』【レビュー・感想】
- 突如消えてしまった村人たちの謎を追うために、主人公の少女「ゲイル」がバット片手に大冒険の旅に出る探索アクションゲーム
- 英語版タイトルは「Phoenotopia: Awakening」。Awakeningという点から察せる通り、フェノトピアのストーリーにおいては序章に当たる作品
- 元々は2014年に公開された、フラッシュを用いて作られた作品のパワーアップ版
- 制作期間は6年
- タイトルの”フェノトピア”は「フェニックス」から「フェノ」、ユートピアから「トピア」を取ってつけられている
Cape Cosmic/フライハイワークス(ローカライズ) | |
探索アクション | |
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xbox版は2021年8月25日発売予定↓
ストーリー
フェノトピアの歴史は暴力と破壊が渦巻く戦乱の時代から始まる。
都市を消滅させるミサイルや命を蝕む生物兵器、必要以上に進化してしまった化学兵器などを用いた世界大戦により、地球は変わり果てた姿になってしまったのである。
そんな中、人類は人工神「フェニックス」を生み出しその圧倒的な力により大戦を終わらせることに成功する。しかし時すでに遅く、地球は生物が存在出来るような環境で無くなっていた。そこで人類最高の意思決定機関「終焉の議会」は人類存続のため地中に巨大な空間を作りそこに避難、再び地表に出られる時が来るまで人類はそこで眠るという施策を実施した。
大戦から数世紀が過ぎ、命を吹き返した地球で人類は再度文明を気付き上げていった。世界は新しく生まれ変わったのだ。そして今、歴史を動かす物語が再び始まろうとしている…。
本作の主人公はパンセロ村の孤児院で暮らす16歳の少女ゲイル。
孤児院の院長に遊びに出かけている子供たちを晩御飯までに連れ戻してくるよう頼まれた彼女は、村の東にある森へ向かいます。森の奥に着くと子供たちが更に奥にある寺院に隕石が落ちたと騒ぎ立てていたので、ゲイルが代わりに寺院の中に入って確認する事に。
様々なギミックや敵を対処しながら到達した寺院の奥で、ゲイルはゴーレムと呼ばれるロボットの壊れた頭を見つけます。
とりあえずそれを回収して寺院入り口で待つ子供たちと合流、村に帰ろうとしたのですがその瞬間に大事件が発生。遠くに見えるパンセロ村上空に巨大なUFOが出現し、村に強烈な光を浴びせて去っていったのです。
ただ事ではない雰囲気を感じたゲイルと子供たちは大慌てで村に帰るものの、村人の姿はどこにも見当たりませんでした。
取り残されたゲイルと子供たちは、先ほど手に入れたゴーレムの頭とUFOに何かしらの因果関係があると考え、唯一の手がかりであるゴーレムを修理出来る科学者を探すという結論に至ります。
全員が村を離れるわけにはいかないので、最年長であり身体能力も高いゲイルが代表して冒険へ旅立つことになるのでした。
…といったように、パッと見ではほのぼのとした作品なのかなという印象を持たれる方もいるかと思いますが、実は世界が激しい戦いで一度崩壊したポストアポカリプスものであり、ファンタジーやSF要素を含んだ壮大な世界観の作品となっています。
当初の目標であるゴーレムの頭を修理するために波乱万丈な冒険を繰り広げながら、その中で旧文明を思わせる遺跡や残滓に触れていき世界の秘密が明らかになっていく…という、非常にワクワクするシナリオが展開され、個人的には非常に楽しめました。
「リンクの冒険」「洞窟物語」リスペクト
本作はいわゆるメトロイドヴァニア的な探索要素のある2Dアクションアドベンチャーです。
制作陣が開発にあたって「リンクの冒険」「洞窟物語」などを参考にしたと語っており、それらの影響を強く感じる部分が幾つかあります。
例えばフィールドマップでは敵シンボルと接触すると戦闘マップに移行する。これは「リンクの冒険」と思い起こさせますね。
素晴らしいピクセルアート・アニメーション
フェノトピアを語る上で最初に触れるべきは、美しいドットによるローケションとなめらかなドット絵アニメーションでしょう。
活気ある街や薄暗い洞窟の中、過去の大戦の痕跡を伺わせる荒れ果てた地にオーバーテクノロジー感満載の未来的な施設など、様々なロケーションが細かく描き込まれたピクセルアートで表現されています。
ドット絵のアニメーションがまた素晴らしく、生き生きとした感情豊かな動きを見せてくれます。
特に主人公ゲイルには様々なアニメーションパターンがあり、そのどれもがなめらかで開発者のこだわりを感じさせます。
本来はアニメーションあってこそなのですが、参考としてゲイルの可愛いアクションパターンを幾つかまとめて紹介しておきます。
左上から右に「1:起き抜けに欠伸をするゲイル」「2:料理をするゲイル」「3:考えるゲイル」「4:バットを振りぬく直前のゲイル」「5:パワプロくんのようなにっこり笑顔のゲイル」「6:猫をなでるゲイル」「7:ミルクを飲み干すゲイル」「8:人を物理的に担ぐゲイル」「9:匍匐前進ゲイル」「10:おいしいトリ肉を見つけたゲイル」「11:笛を吹くゲイル」「12:ロブスタースペシャルを5秒以内で完食するゲイル」「13:ジョギングゲイル」「14:再開した親友と抱き合うゲイル」「15:釣果をどや顔でアピールするゲイル」
またこの手の作品にしてはNPCの数がかなり多く(数百人いる)、更にほとんどのNPCに2種類以上の会話があり状況に合わせてセリフも更新、特定のアイテムを持っていると特殊な会話をするキャラもいるなど、何気ないNPC1人に対しても妥協のない作り込みが窺えます。
良質なBGM
フェノトピアの世界を彩るBGMは、世界観にマッチした良曲ぞろい。
公式がYouTubeに楽曲がアップしていたりするので、気になる方はチェックしてみてください。
難易度は高い
可愛らしい見た目の作品ですが、最近のゲームにしては簡単にクリアはさせねぇぞ!といった難しめのゲームデザインとなっているのも大きな特徴です。アクションや探索、謎解きなど全体的に結構ハードな調整がなされています。
例えばアクション要素から見ていくと「スタミナの概念がある(スタミナ管理が必要)」、「回復アイテムは食べきることで初めて回復効果が発動する+食事中は無防備」、「その場でアイテムをバリバリ喰うモーションがクッソ可愛い(これは関係ない)」「連続で通常攻撃を当てるとダメージ減衰が発生する」、「3連続で被弾しないと無敵時間が発生しない(無敵時間を利用して的なことはやりにくい)」といったように、被弾前提でごり押しクリアといった事を許さないようなシステム調整が施されています(ごり押し出来ないとは言っていない)
ちなみに幾つかの要素はオプション設定で緩和することも可能です(通常攻撃のスタミナ消費0、全アイテムがメニュー内で食べれるようになるなど)。どうしても難しく感じる人は活用しましょう。
また探索・謎解き要素もかなりの歯ごたえがあります。
膨大な探索要素(約200個程の収集要素)、それまでに入手したアイテムやステージ内オブジェクトを上手く組み合わせないと突破出来ないギミック、中には離れた場所にヒントが置かれた謎もあったりなど、頭を悩ませるギミックや謎が世界中に散りばめられています。コンプリートを目指すならば相当なやりごたえがあるので覚悟して挑みましょう。
どうしても分からない場所があった場合は、めちゃくちゃ丁寧に解説されている攻略サイト「フェノトピア攻略メモ。」様を参考にしましょう。
気になる点
個人的にかなり好きな作品なのでベタ褒めしたままこの紹介記事を終えたい所ですが、気になる点や人を選ぶであろう点が少なからず存在するのでそちらも触れておきたいと思います。
それは何かというと現代の作品にしては少し不親切というか、良くも悪くもレトロゲーっぽい仕様があるということです。具体的に幾つか紹介しておきましょう。
ボス戦のリトライ性が悪い
ボス戦でゲームオーバーになった際に即リトライという選択肢がなく、タイトルに戻るか最後にセーブした地点からやり直すの2択しかありません(どちらを選んでも、最後のセーブまで巻き戻されるので事実上同じ)
アクションゲー慣れしていないとボス戦でやられてしまうことも割とあり得るバランスだと思うのですが、死にやすいわりにリトライ性が悪いのはアクションゲームが得意ではないユーザーへの配慮が足りない気がします。
マップがない
エリアが入り組んだ構造をしていたり、同じマップを複数回行き来することになるメトロイドヴァニアというジャンルにおいて、マップが無いのは難易度を上げている要因になっていると思います。
オートセーブがない
これに関してはユーザー側が注意すればいい問題ではあるのですが、最近のゲームにしては珍しくオートセーブがありません。色々探索を終えた後にセーブを怠った状態で事故って死んだみたいなことがあると結構キツイです。
一部セーブポイントでのHP全回復機能が不親切
本作のセーブポイントは触れることでHPを回復する機能があるのですが、最大HPの半分までしか回復しません。…が、実はゾフィエル像付近のセーブポイントでセーブ→タイトルに戻ってロードするとHPが全回復するという仕様が隠されています。
それならゾフィエル像があるセーブポイントは触れた瞬間にHP全回復する形で良かったんじゃないかな。
なんでもかんでも便利にすれば良いってものではないし、不便なことを要素として入れること自体はアリだと思いますが、人によってはかなりストレスに感じる部分かもしれません。
まとめ
PS4「フェノトピア」プラチナトロフィー獲得!
豊富なNPC会話パターン、かわいくて美麗なピクセルアートなど凄まじい作り込み・密度の探索アクションゲームです。世界観やBGMもGood
今風でない不親切な部分もあるけど、それをひっくるめてもオススメしたい一作続編のためにももっと売れて欲しいなぁ pic.twitter.com/0aBtRsksSO
— ととねこのゲーム攻略所 (@totonekonet) July 13, 2021
- 探索型アクションゲームが好きな人
- 骨太なゲームを遊びたい人
非常に良く出来ているゲームであり探索アクションゲーが好きなら是非触れておくべき作品だとは思います。が、シビアなバランスや今風ではない不親切な要素があるなど人を選ぶ作品であることは間違いないでしょう。
ですがそれらをひっくるめても本作は推していきたい、そんな魅力あふれる作品です。
興味が湧いた人は是非購入してプレイしてみてください。この密度、作り込み、ボリュームで定価2,000円は安すぎる!価格設定間違ってない?
ドット絵すっごい…