勇ネプの頃からまるで成長していない
内容
ととねこのゲーム紹介所・第26回 『アストリア アセンディング(Astria Ascending)』【レビュー・感想】
- 調和と犠牲をテーマにした物語が描かれる海外産RPG
- PS5/PS4/Switch/XboxSeries/XboxOne/PC向けに発売中
- XboxGamePassに対応
「アストリア アセンディング」とは
ゲーム概要
本作はフランスのデベロッパーKobojoが開発し、2015年iOS向けに配信されていたRPG「Zodiac: Orcanon Odyssey」のグラフィックや世界観などをベースにシナリオやゲーム内容などを再構築した新作RPGです。
ストーリーはFFシリーズなどのシナリオを手掛けた野島一成氏、音楽は「タクティクスオウガ」「十三機兵防衛圏」などの楽曲を手掛けてきた崎元仁氏が担当。
開発はArtisan Studios。
こちらは2DのRPGを専門とし、最高のクオリティの2Dゲームと日本市場でAAAのIPを開発する一番の西洋開発会社を目指しているカナダのメーカーです。ちなみに代表作は「勇者ネプテューヌ」となっています(白目)
あらすじ
本作の舞台は様々な人種が存在する地”オルカノン”。
この世界の住民は”調和の実”を食べることで種族間で争うことのない平和な世界を実現していた。
しかしこの平和は調和を乱す怪物”ノイズ”によって絶えず脅かされているので、これらに対抗するためにデミゴッド(半神)と呼ばれる8人の英雄が住人の中から選出される。彼らは3年後に死ぬという命を代償を払う代わりに超人的な力”ゾディアック・パワー”を得るのである。
プレイヤーは残りの任期が約3ヶ月余りの第333期デミゴット8人を操作して、調和と犠牲を軸にした物語を進めていくことになります。
戦闘システム
戦闘はオーソドックスなコマンド選択型ターン制バトルですが、特徴としてフォーカスポイントという要素が存在します。
戦闘中に敵の弱点となる攻撃をすると画面右上の「FP」というポイントが溜まっていきます。これを行動時に消費するとダメージの倍率を増やしたりHPの回復量を増やしたり、防御時に被ダメを押さえるといったことが出来るという仕組みです。(どこかで似たようなシステムのゲームがあったような気も…)
このFPの概念は敵にもあるので、特にボス戦では弱点を突かれないように防具の属性を調整するのが重要となっています。
以下良かった点と気になる点を簡単にまとめてみました。
良かった点
グラフィックや雰囲気、BGM
- 人物やモンスターなどのグラフィック、BGMなどはとても良い
豊富なコレクション要素
- メニューに各アイテムカテゴリ毎の図鑑やゲーム内実績があるといったコレクション要素が豊富に用意されている
- こういったものをチマチマ埋めるのが好きな人は楽しいと思う
- ただし現状では正常に機能していないので注意(一部敵は倒しても討伐数が増えない、アイテムを盗んでもその記録が反映されないなど)
選択を迫られる育成要素
- ストーリーを進めることで各キャラクター毎に決められた3つのジョブを任意の順番で習得できる
- メイン、サブ、サポートのどこで習得するかによって獲得出来るアビリティなどに差が生まれる
- メインジョブは全部、サブジョブはアビリティのみ、サポートジョブはサポートアビリティのみ習得できる
- めちゃくちゃ自由というわけではないけど、ある程度プレイヤーによって差が出るシステムは嫌いじゃない
- ちなみにジョブの選択し直しは出来ないので好みは分かれるかと思います
気になる点
全体的な説明不足
- クエストで目的地や対象がマップに表示されない
- 物凄くぼんやりしたヒントしか貰えない場合もあり、自力でマップを走り回って探す必要がある
- クエストで対象となる人物がどこにいるかの説明がない場合がある
- 「~に話せ」といったように名前だけしか情報を貰えない場合が。終盤ならともかく序盤から街にいる人の名前なんて覚えていないんだよなぁ
- チュートリアルの表示タイミングがおかしい時がある
- 今更?みたいなタイミングで表示されることが
フィールドアクションなど操作性全般
- フィールドでのアクションやギミック周りの挙動などが、操作し難かったり不安定
テンポの悪さ
- ボイス付きのイベントシーンではメッセージ送りをすることが出来ない
- キャラクターボイスは全て聴かなければならない
- 戦闘もモーションが長かったりするのでちょっとテンポが悪い
わざと見辛くしているのかと疑いたくなるマップ
細長い線は扉の繋がりを示しています。サイドビューの2Dゲームでここまで酷いマップを作れるのは逆に凄いと思う。
UI周り
文字の小ささ
私はPS5版をモニターでプレイしたので大丈夫でしたが、Switch版携帯モードでこの文字の小ささはちょっと厳しいのではないでしょうか(特に調整などはされていないようです)
インターフェース全般
インターフェースも決して褒められたものではなく色々言いたいことはあるのですが、個人的に一番きつかったのは戦闘中でのスキル選択。
キャラによっては最終的に60以上のスキルを習得できるのですが、スキルは一列表示かつ並び替えや一部非表示といった機能はありません。
丁度真ん中位に使いたいスキルがある場合、選ぶのにも毎回一苦労です。
偽カーソル位置記憶
上でスキル選択が大変という話をしましたが、本作にはカーソル位置記憶機能があります。
次回選択時、カーソルの位置が前回選択した箇所に最初から置かれる機能
この機能が正常に働いているなら多少はスキル選択の面倒さを軽減することが出来たと思うのですが、残念ながらこのカーソル位置記憶は見せかけだけで実際には機能していません。
それでは実際に機能していない様を紹介したいと思います。
上の画像は前回の行動で「タラマリマ」というスキルを選択した後のターンでの様子。
スキル欄のカーソルの初期位置がタラマリマに合っているように見えますが、左下に「ファイア」と表示されているのが分かると思います。
なんと実際のカーソルは前回選んだスキルの場所にはなく、スキル一覧の一番上である「ファイア」に合っているのです。もちろんこのままスキルを使うとファイアが発動されます…。
戦闘関連
中盤辺りの敵速度早すぎ問題
私は基本的に戦闘難易度はハードでプレイしたのですが、ゲーム中盤辺りに敵の速度調整おかしくね?という区間があります。
本作はステータスのAGIが高い順に行動できるのですが、その段階では超過剰に育成しないと到達出来ないようなAGIばかりの敵が出現する区間があります(ヘタすりゃ終盤の敵より早い)
一応対抗策として1ターン目は最初に行動出来るというスキルがあるのですが、ジョブ選択によっては習得出来なくなるため全員が出来る対策ではありません…
一部スキル強すぎ問題
割合ダメの「ドレイン」がラスボス含む全員に通用するの強すぎでは?
ボスがスキャン抵抗持ち
敵の耐性を調べるスキル「スキャン」がボスには効かず、総当たりで弱点を探さないといけません。
敵の使う技や色などからなんとなく察しろってことなのかもしれませんが…
ミニゲーム全般
シューティングゲーム
単純に出来が悪い。
J-Ster
細かいルール説明は省きますが、6角形のトークンをグリット上に配置していき、トークンをひっくり返し合うというミニゲームです。
これに関してはトークン毎にコストを付けるなどルールを整備すればもう少し面白くなりそうではありますが、現状では強いトークンを使えばいいだけの単純なゲームになってしまっています。
散見されるテキストミス
テキストミス例:ヘレモンって誰だよ
サイドクエスト「ノイズの弱点」にて。
このクエストではシータックという人物によって指定された敵を討伐し、入手したアイテムを彼に届けることで進行していきますが、クエスト目標は「ヘレモンに届ける」と表示されます。
この人の名前シータックなのですが…。
ちなみに言語を英語にするとシータックに届けるとなっていますね。つまり日本語特有のミスだぜ!
テキストミス例:一つもあってねぇ
サイドクエスト「クレスの抵抗」にて。
3種類のアイテムを集めるよう指示されます。
今回は珍しく、入手場所も教えてくれます。
「苔の貝殻」はグランドキャニオンのモセスで見つかるとの事ですが…
実際に集めるアイテムは「苔の生えた殻」!グランドキャニオンは海外版の直訳で実際の名称は「大峡谷」!ドロップするのはモセスじゃなくて「モス」だ!一つもあってねーぞ!
日本語版だけ成立していないギミック
詳しくは上記事参照。
これらはあくまで一例。
人間誰しもミスはあると思いますし、多言語対応な点を考慮するとある程度のミスは許してあげるべきかと思いますが、流石に量が多いかな。というか日本語だけやたらと間違っているのですが…。
アプデで対応すれば改善出来る要素なので、今度の修正に期待したいですね。
クエストの達成率が100%を越える
本作をプレイした人のほとんどが「クエスト達成率が100%超えてるやんけ!」といったツッコミをしたことかと思いますが、これは何故かメインストーリーも1つのサイドクエストとしてカウントされていることが原因です。(上画像の内訳としては「現状クリア可能なサイドクエスト42個」+「メインストーリーのチャプター16個」を足して58個)
その他バグ
- コレクター図鑑の登録がその場で行われないことが多い(セーブ→ロードで反映)
- 闘技場でのとある戦闘の報酬で何故かSPが30,000も貰える(通常戦闘で貰えるのは5~10程度)
- 戦闘時のエフェクトがおかしい時がある
- 戦闘ボイスが間違っている気がする(多分IDずれ)
- 空中で敵に接触すると戦闘終了後変な場所に移動させられることがある(壁の中や別のエリアに飛ばされることも)
- マップに自分がいる位置を表示するアイコンが表示されない(チュートリアル画面では表示されているのに…)
- 宝箱を開けた際に何を取得したか表示されない時がある。私は宝箱を開ける前に毎回セーブして確認しました(全ギレ)
- Xbox版をゲーパスでプレイしたら50%位の確率でタイトル画面での操作が効かない(PS5版では発生は確認出来ませんでした)。Twitterで調べると同じような現象に遭遇した人が複数いるようなのでこれは早く修正して欲しいですね
- クエスト進行が出来なくなる致命的なバグもいくつかアリ
まとめ
- グラフィクやBGMなど素材は魅力的
- クエストやコレクション要素などの物量、ゲームシステムなど上手く調整すれば面白くなりそうな魅力はある
- ただし残念ながらそのほとんどが上手く機能していない、バランスもガバガバ
- ユーザビリティなんぞ糞食らえ!
- バグが多く動作が不安定。実績(トロフィー)の取得率0%のものが多く、バグッている可能性がある(最新アプデ適用でトロフィーコンプは出来るようになりました)
- バグが多い現状では正直な所あまりオススメは出来ない
バグが多い、表示がおかしいといった挙動の不安定さ、ガバガバなバランスなど、開発チームが過去に手掛けた「勇者ネプテューヌ」を彷彿とさせる作品ですね。
>ある程度プレイヤーによって差が出るシステム
私も結構好きなんですが、昨今はネットで最適解が簡単に調べる事が出来ちゃうんですよね。
いや、調べなきゃいいんですけどね。