万人向けではないが、それを考慮しても全人類プレイして欲しい名作
『In Stars and Time』をプレイしての感想
基本情報
insertdisc5 / ARMOR GAMES INC | |
RPG | |
PS5PS4SwitchSteam | |
2023月11月21日 |
- 「もし、過去の失敗を何度も何度も繰り返されるとしたら、あなたはどうする?」
- 運命によって結ばれた”家族”、「シフラン」と仲間たちが悪の王の暴政を終わらせるために戦うタイムループ系統RPGアドベンチャー
- しかし、勝利を目前に悲劇は起き、時計の針は巻き戻り始めた。そして、すべてをやり直すことになってしまった。
- ループに気づいているのはあなただけ。繰り返しの目覚めに作り笑いさえも擦り切れ、それでもなお、希望を胸に歩み続ける。この時の悲劇に永久の終止符を打つために
時間のループに囚われていることを知っているのは自分だけ
本作の主人公であるシフランとその仲間たちがラストダンジョンに向かう前日から物語がスタートします。
彼らの目的地はドーモンドという場所にある”ウツロイの館”。この館は強大なクラフト(魔法のようなもの)の力を操りヴォーガルド国全土に呪いを放つ悪の王に制圧されています。
王は触れたあらゆるモノは時間が静止してしまう呪いの力を持ち、王によって世界中の人々やモノは静止させられていました。
悪の王の暴挙を止めるためには倒すしかない、ということで”ウツロイの神”に祝福を受けているため王の呪いに抗いウツロイの館からただ一人脱出出来たミラベルと、彼女に力を貸すイザボーとオディール、更に呪いで凍り付いた姉を助けるために同行するボニーの5人でラストダンジョンに挑む事になるのですが…
シフランはあまりにもあっさりと命を落としてしまいます。…しかし次の瞬間
館へ向かう前日、ゲーム開始時の昼寝から起きたタイミングで目を覚まします。
混乱するシフランでしたが、過去に一度体験した事と同じ展開が続き、更にループという謎の協力者からの助言もあり、自分が死ぬと時間が巻き戻っていることに気付くのです。
シフランはループしている事に気付いていない仲間たちに自分が陥った状況は告げず、「失敗しても死ぬことで好きなだけ繰り返しミスを修正出来る」タイムリープの能力を活用して王討伐を目指すことになります。
といったように本作はタイムループを題材にしたRPGになっています。
ループを繰り返すごとに得られる知見は行く手を阻む試練に対する新たな解決策となり、より良い選択肢を選ぶことを可能にしていく。ループを繰り返しながら敵を倒し、その先に待つ真実を目指そう。
ループ物ならではの要点を抑えた丁寧な作り込み
本作のまず素晴らしい点はタイムループを主軸に置いたストーリー展開や作り込みです。
同じミスを繰り返すと悔しがったり、同じイベントでもループを重ねることで別の選択肢が登場して多少展開を変えられたりなど、ループ物に必要な要素がしっかりと作り込まれています。
特にテキストパターンの分量がかなりのモノ。「ここの会話パターンどんだけ派生するの?」と結構驚かされます。
プレイヤーをもループに疲弊させる攻めたゲームデザイン
この作品で不満点として最も挙げられやすいのは、おそらく「ループによる退屈さ、苦痛さ」ではないかと思います。
こういったループを扱った作品ではいわゆる撮れ高がある・盛り上がるシーンが中心に使われ、試行錯誤する場面などはダイジェスト的に短めに編集されることが多いのではないでしょうか。これは当たり前な話で、似たようなシーンを何度も繰り返し見るのは退屈ですし、そういったシーンは短めにするのは当然の事でしょう。面倒なシーンなんてあまり見たくないもんね!
ですが、本作はそういったループ当事者が同じような状況を繰り返しながら試行錯誤していく苦痛・退屈さをプレイヤーにもかなり体感させていく作りになっています。
序盤は初めて見る新鮮な会話にやりとり、タイムリープを活用しながら正解を見つけていき徐々にゴールへ近づいていく期待感、仲間たちと絆を深めるイベントなど、タイムリープを使う事でこの冒険の成功を予感するシフランはとても前向きで生き生きしています。
しかしストーリーを進めていくと、手がかりを得るために同じような状況を繰り返していく試行錯誤、先が読めてしまう会話に作り笑顔で付き合わなければならない苦痛、状況を打開できるかも!といった希望からの失敗の繰り返し。
仲間たちと絆を深めるイベントでは強力なスキルを習得できるのですが、気付けば攻略のためだけにこの感動的なイベントを作業的にこなすようになる…など、このゲームはループによって精神が摩耗していくシフランの様子がとてもしっかりと描かれています。
このゲームはプレイヤーにも、ゲーム体験としてはマイナスになりうる「同じような作業の繰り返し」を敢えて操作・体感させることで、シフランと同じようにプレイヤーの心を削っていくのです。
とは言え流石に読む必要のない文章をスキップする機能や、タイムリープを始める地点を変える(館の攻略途中から始められる)といった周回用の時短システムは用意されています。
ですが何度聞いても絶対に変わらないのにスキップ出来ないやり取りがあるなど、おそらく意図的にループによる辛さを感じさせるような仕組みをゲーム内に組み込んでいるのではないかと思われます。これにより主人公”シフラン”への感情移入がとても深いものになるのです。
ただこのデザインは非常に危険なものであり、ヘタをすれば「退屈なゲームだ、もうやめよう」と途中で投げ出すプレイヤーが続出してしまうかもしれません。
ですが本作は「ループする毎に新たな情報を得られる丁寧なテキストや作り込み」「各地に散りばめられた謎や先が気になる展開」「周回するごとに好きになっていける魅力的なキャラクターたち」など、シフランや仲間たちとこの物語の結末を見届けたいというモチベを上げる要素が盛り込まれているので、割と辛いけど最後までプレイ出来るようになっています。
また表情豊かなグラフィックも高評価ポイント。印象的なカットシーンも多いです。ネタバレにならない程度にシフランの表情集を貼っておきます。
RPG要素は可もなく不可もなく
戦闘はゲージが最大になったキャラから行動していくオーソドックスなATBコマンドバトル。
攻撃や各キャラにグー・チョキ・パーの3属性が設定されており、じゃんけんと同様に有利な手で攻撃するとダメージ増加、逆だと減少。
同じ属性を5回連続発動させると強力な全体攻撃・回復技を発動出来るといった要素も。RPGなので装備やレベルといった概念もあります。
戦闘システムはシンプルで分かりやすく良くまとまっているとは思いますが、ここを目当てに遊ぶゲームではないかなと思います。
神ローカライズ
本作は海外製の作品で、架け橋ゲームズがローカライズを担当しています(翻訳者は柴田泰正氏、江野朋子氏)
「最初から日本語で書いたシナリオなんじゃないか?」という位、翻訳の質が高いです。
独特な言い回しも上手く表現されていますし、違和感を感じる部分はありませんでした。本当に神としか言いようがない。
気になる点
- テンポを最重要視する人、本当にせっかちな人は無理かも
- 戦闘が避けにくい
演出としては素晴らしいのですがループの苦痛を実際に味わう事になるので、本当にせっかちな人は耐えられないかも
本作はシンボルエンカウント制。後半になるとほぼ戦闘を回避出来る装備が手に入るのですが、それを入手するまでは狭い場所での戦闘がかなり避けにくい。これもある意味演出だとは思うのですが、流石に面倒ではある
まとめ
- ループモノの作品として高い完成度
- 高品質なローカライズ
- 魅力的なキャラクターや引き込まれるストーリー
- 面倒に感じる要素が多いので流石に人は選ぶかも
PS5『In Stars And Time』プラチナトロフィー獲得!
本作は悪の王を倒す2日間の中でループしている事に唯一気付いた主人公となり、ループからの脱出を目指すRPG
作り的に向き不向きありそうですが、個人的には今年トップクラスの名作だと思います
トロフィーはストーリー系以外Act4までで獲得可能 pic.twitter.com/ZHnBc3RAi7
— ととねこのゲーム攻略所 (@totonekonet) November 28, 2023
人を選ぶ部分がある作品だとは思いますが、題材などに興味を持ったなら是非ともプレイして欲しいです。
個人的には2023年ベストゲームで良いかも…、少なくともTOP3を選ぶならノータイムで入れる位にはぶっ刺さった作品でした。
START AGAIN: a prologue
ちなみに本作にはプロトタイプ版「START AGAIN: a prologue」が存在します。
こちらはSteam版のみとなっていますが、興味があればこちらもプレイしてみましょう(展開などは異なりますが、「In Stars and Time」にあるイベントは大体含まれてはいます)
おまけ:ACT6のあるイベントについて(ネタバレなし)
話の内容などのネタバレは無いですが、そのイベントを発生させるちょっとしたヒントやトロフィー・実績に関する話を書くので注意。
ACT6にて、とある隠し的なイベントが用意されています。
こちらはトロフィー・実績にもなっているのですが、クリアトロフィーに対してこちらのイベントを見るトロフィーの取得率は大体四分の一程度しかありません。
このイベントを見ないのはとても勿体ないので、見るためのヒントをちょっとだけ書いておきます。
この状態でACT6で何かをすると発生します。ちなみにこのイベントを見てからエンディングを迎えると最後に表示される一枚絵がちょっとだけ変わります
ととねこさんのクリア報告ツイートを見て以来、ずっと気になってたんですよねぇ!
可愛いなぁシフラン君……へえ、可愛いね……買うしかないな……!